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さんがつはふかきくれないのふちを

2009/04/10 (Fri) - ●●●

恩田陸の『三月は深き紅の淵を』を読み始めたよ。第一章まで読んだけどイイね!
(以下「 」内は本文から。)

まずもって出だしからね。
怪しさムンムンのお屋敷に入ってみたら体を包む不穏な空気、四色のスリッパ、続けて同じように(ちょっと過剰なまでに)いくつかの色でもって語られる応接間の様子、四種のカップアンドソーサー、しかも登場人物の名前にはご丁寧にそれぞれ色と動物が入っている(牽引役のカフスには“馬”まで仕込んだりして)。なんて思わせぶり!なんて遊ばされっぷり!笑
読み手はこの時点で頭フル回転ですよ。もう既に作者はヒント、伏線(まだ何についてかもわからないのに)を張っているんじゃないか、隠された共通のモチーフはないかetcetc…。

そして、このまさに“思わせぶり”な描写自体が、この章の遊びなんだよなぁ。そして核でもある。
『三月は深き紅の淵を』という非常に特殊な背景を持っているらしい、そしてとんでもなく面白いらしい本について、主人公と一緒にどんどん読み手側は惹かれているんだけれど、主人公と読み手で一つだけ違うことは、主人公が登場する本のタイトルがまさに『三月は深き紅の淵を』である、ということをこの私が知っているということだ。講談社から出た、667円(税別)の、本なのだ。これ。
「本を読む時に、私たちは主人公の視点で一緒に物語を体験するんですけど、無意識のうちに、さらにそのもう一回り外側のところで、作者の視点で物語を読んでいる。」
そして全部本にも書かれてるんだよね。
ちょっと突然にも思われたアングラ、おたく、文化の画一化の話もちゃんと繋がっている。
「(中略)…あの本の存在そのものに、どこか我々をくすぐるものがあるんだろうねえ。今日び謎めいた存在なんてもの自体が希少価値だしね。それがなくては生きていけない、というほどのものでないし、そんなところがいいんだね」
主人公が至福を感じるシーンはこんな風に書かれている。
「夜、暖かい家の中で、これから面白い話を聞くのを待っている。恐らく、大昔から世界中で、なされてきた行為。」
謎めいたものに人間は惹かれちゃうものなんだ。開けっぴろげな、衆目に垂れ流しの何かではなくて。そして、この本を読みながらそれを味わっている二重の面白さ。
あと入れ子式構造についての話は、他の恩田作品も思い出させる。ねじの回転もロミロミも。

第一章が、『三月』の第一部を彷彿とさせるような作りになっているだけに、第二章からも気になるな。第一章は第一部であると共に、その先の手引き、ネタ振りでもあるんだろう。
『三月は深き紅の淵に』の“内容”以外は、すべてが、『三月は深き紅の淵に』(という本)に書かれているのだ。面白い。
ザクロの描写だけが第一章と第四部で対応が逆だったのがちょっと気になるけど。これも遊ばされているだけなのかなーどうかなー。

そして本好きだなーとちょっとでも思ったことのある人ならがくがく頷いてしまう言葉多数。皆川さまも食い付くわけです。
「人間が一生に読める本は微々たるものだし、そのことは本屋に行けばよーく判るでしょう。私はこんなに読めない本があるのか、といつも本屋に行く度に絶望する。読むことのできない天文学的数字の大量の本の中に、自分の知らない面白さに溢れた本がごまんとあると考えると、心中穏やかじゃないですね。」
ほんとだよ…!ほとんど恐怖と言ってもいい!
本のタイトルや作家の名前がぞろぞろ出てくるのもの楽しい。知ってるのも知らないのも読んだのも読んでないのも沢山あるけど、本が沢山ある!というその状況に幸せを感じていい本なんだよ!これは!底に貫かれているのは本への親愛の情だ。
きっと私が気付いてない仕掛けもまだまだあるんだろうなー…そう思うと悔しいしわくわくするね!
他の本をもっともっと読めばそれぞれの本でわかることってもっともっと増えるんだろうな。

「楽しみにしてる本って、逆になかなか読み出せないじゃないですか。」
全くもってそのとおりで、でもとりあえず、タイトルだけが心に懸かってかれこれ何年か知らないけど、やっと読み始めた『三月は深き紅の淵に』。第二章、また腰がひけちゃう前に続きを読もう。

*

しかしあの、傑作を書きたくてその外殻から作り始めちゃう(わかりやすい故に秘密ありげな容貌の)四人には、なんというか、読み手とどまりの、けれど永遠に“作家”を憧れ続けてやまない、ちょっと滑稽ででも愛しい姿があって、笑顔になってしまうね。彼らもまた読者なのだ。

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