昭和22年の「くいーん」での稲垣足穂と江戸川乱歩対談?からの抜粋。
乱歩の発言が興味深い。
たるほ
「江戸川さんは新プラトニズムとグノーシス派の匂いがする。「一寸法師」や「黄金仮面」や「陰獣」を媒介にして、古代ギリシアの理想を快復しようとしているようだ。新ギリシア主義を逆説に裏付けようとするのが、江戸川乱歩の文学だとはいえないかしら。」
乱歩
「いま気がついたからいうが、同性愛の精神というものが、そもそも物事を抽象化する精神と同じですね。」
たるほ
「私はこういうことをかつて思った。童話にはメタフィジックなものと自然主義的なものとがあるが、前者などは明らかに少年愛の影響を受けた顕著な例だと。さっきのポオにおける同性愛云々も、あそこに取り扱われている女性を顧れば当然だと思われます。ポオの女性は抽象そのものです。」
乱歩
「具体的なことはいわない。隠すわけじゃなく、性格上そうなるのだ。同性愛的な性格の人は男でも女でも抽象性が強い。この抽象性と同性愛的なものの関係は、普通人にはちょっと判りにくいけれどもね。同性愛というと変態的なものを連想するけれど、稲垣君もいわれるように中性的なものを愛する心ですよ。中性が理想なんです。男と女に分化されてしまえば具体的になるが、もっと抽象的なもの、男女未分化の人間への憧れ、中性の憧憬といいますかね。」
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