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八木重吉

2011/02/11 (Fri) - ●●●

『貧しき信徒』
http://www.aozora.gr.jp/cards/000013/files/542.html
青空文庫

すごいなぁとは思わない詩人。だけど何か言いたくなる力を持っている…。ときどき言葉がストレートすぎてこちらが戸惑うくらいだ「うれしい」「うつくしい」「おもしろい」。短く、意外性も何もなく、ポーズもない。おしゃれでもなければ格好良くもない…。思考性?抽象性?…ない。重吉の詩はただ、彼の生活の中での一瞬の把捉を、読んでいる私も折り重なるようにして体験してしまうような、シンプルな投入の可能性だけを開いている。日常生活を過ごしていても詩的な悟りの瞬間=非時間の経験を偶々もってしまう人っていうのは少なくないと思うんだけど、『貧しき信徒』では、私の生活において排水溝に流れてったであろう無数のその非時間の経験が書き留められて残っている(ぜんぶの詩がそうとは言いませんが)。非時間においては(日常の大半がそうであるように)機械的・習慣的に動いている時のように自己意識が投げ出されているのではなくて、投出されている<私>を知りつつ眺めている透明な意識が目覚めている。時間に食い殺されない仕方で、残存するものがある。

「涙」
 めを つぶれば
 あつい
 なみだがでる

これをそもそも残そうという……すごいだろ…
でも確かに人間て目をつむれば熱い涙が出てくるんだよね…それ以外でないんだよね…。まじ困る。

「花がふってくると思う」
 花がふってくると思う
 花がふってくるとおもう
 この てのひらにうけとろうとおもう

これだけの言葉でこれだけの再現性…これはちょっと技巧ある感じする。
スローモーションになるのね。

「涙」
 つまらないから
 あかるい陽(ひ)のなかにたってなみだを
 ながしていた

同じタイトルも多い。
これはもう、わかる…ってしか…。
わたしは詩に関して言えばもう「わかる」か、「わからない」かだけだと思ってるので、私は、重吉の詩は「わかる」と思う、っていうそれだけです。
逆にこれだけ単純化されていたとしても難解さと切り離されていたとしても、重吉の詩に「?」となる人はいるのであろうし、そこが人間の面白さだとしか言えない…。言葉の理解以上のものが問われている次元が確かにあって、そこへの反応の如何は今までのその人間の生きて来方による。

「お銭(あし)」
 さびしいから
 お銭を いじくってる

「水や草は いい方方(かたがた)である」
 はつ夏の
 さむいひかげに田圃(たんぼ)がある
 そのまわりに
 ちさい ながれがある
 草が 水のそばにはえてる
 みいんな いいかたがたばかりだ
 わたしみたいなものは
 顔がなくなるようなきがした

「秋のひかり」
 ひかりがこぼれてくる
 秋のひかりは地におちてひろがる
 このひかりのなかで遊ぼう

「かなしみ」
 かなしみを乳房(ちぶさ)のようにまさぐり
 かなしみをはなれたら死のうとしている

この「かなしみ」だけはちょっとトーンが変わる。

「顔」
 どこかに
 本当に気にいった顔はないのか
 その顔をすたすたっと通りぬければ
 じつにいい世界があるような気がする

あと重吉はクリスチャンだったみたいだけど、キリスト教の祈りにあるような(少なからず)自己強制的・時間的・自己反省的意識っていうのはあまり感じない。むしろ、またゲットしたよ~っていうラフさに満ちている。意図しての獲得じゃない。常に「そういう」気分に浸されていたという雰囲気がある。

「ひかる人」
 私(わたし)をぬぐうてしまい
 そこのとこへひかるような人をたたせたい

それでもこの詩には、結局ヴェイユと同じ重吉の「感情」を見る。
不思議。


そしてこんなこと書いてるばやいでないのにむだに長くなったけど肉くってがんばります…
おわらぬ…おわらぬ…
いつまでも原稿はじめられぬ…うううく
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